<1>
感情や信仰から区別された人間の知的活動一般。
<2>
観察と実験に基づく自然認識並びにこれの社会や文化の領域への適用。
<3>
事物の構造や法則を巡る探求活動並びにその所産としての体系的な知識。
<4> 宇宙の論理に関する表現様式。
<5> 存在様式の普遍的提示。
<6>
各種現象を解明しその知見に基づき社会を説得する方法。
[説明]
(1)概念規定は通常次のように行われる。全体的な対象領域から、先ず該当しない対象を排除し(捨象)、次に該当する対象を表す属性を列挙してその共通属性を想定(抽象)する。この文脈から上記<1>は芸術や宗教以外の知的対象領域を指す。上記<2>では、その対象から価値を捨象して普遍的法則を求める自然科学並びに価値に関係づけて対象の個性を記述する歴史科学(文化科学)に区分する。このほか自然科学に対応して人文科学や社会科学などの用語が用いられる。<3>〜<5>にはさまざまな定義を例示した。<6>は社会性との絡みを述べている。広い意味で科学は他者を説得する道具であり、実験や観測に基づく真理といえども検証手続きとして社会的合意が求められる。
一方、反論できない響きから「科学的」という言葉が正当化の手段としてよく用いられる。マルクス経済学でいう科学的社会主義は空想的社会主義に対応する用語法であるが、空想的でなければ科学的かどうかの判断はイデオロギー問題であり、さらに科学にイデオロギーを持ち込むことの是非は別問題であり議論が分かれる。
(2)価値概念を含む場合は目的論的科学、一方含まない場合は方法論的科学に区分できる。これは経済学の分野で「価値論争」あるいは[方法論争」と呼ばれる。具体的には経済現象の捉え方を巡って「合理主義経済学」と「歴史主義経済学」の二つの流れが認められ、前者は普遍性を後者は個別性を強調してきた。両者は近代経済学とマルクス経済学に相当する。
科学は方法論とする立場からは目的は各個人が別途に定める。一方、目的論と方法論を一体的に扱う立場は論理的に思想の自由が保障されない。一般的に、社会は目的を含まない。換言すれば社会は組織ではない。しかしこれは理想論で現実の人間は必ずしも合理的ではない。具体的にいえば戦前の帝国主義あるいは戦後の南北問題で提起されている基本的な課題は、それぞれの社会が置かれている異なる歴史状況をどう妥協させるかが問われる。これは経済と政治の関係にほかならない。