〈1〉ある主体をとりまく事物の総称。
〈2〉人間または生物と相互作用を及ぼし合う外界。
〈3〉めぐり囲む区域。
〈4〉四囲の外界。
〈5〉系を取り囲む周囲。
[説明]
(1)日常用語としての「環境」の用語は、「環境問題」「環境基準」「環境ホルモン」などのように社会性の文脈から複合語として使われ、単独に使用されることは稀である。上記〈1〉〈2〉〈5〉は主体-客体の関係性から環境を客体に対応させて定義している。一方、上記〈3〉〈4〉は主体は暗黙の前提をなし明示されていない。このように主体に何を当てるか(つまり中心部に何を持ってくるか)によって環境の意味は大きく異なってくる。例えば、ある細胞を主体に選べば内部環境とは特定の組織あるいは生物個体を指すことになる。環境の用語は本来的に生物学の用語であり次の文脈が諒解されている。(下記の図075意識と環境の考え方を参照。)
@主体的環境:環境を内から外への外展開として捉える能動的な立場を指し、主体に受け取られ認識される外界の写像として環境を位置づける。
A客体的環境:環境を外から内への内展開として捉える受動的な立場を指し、外囲の条件を一定の基準のもとに整理したデータベース体系で最終的には主体的環境に取り込まれる。
(2)電脳経済学では上記〈5〉によっている。系-環境を入れ子関係から捉え最外部に宇宙を据え、その宇宙は外部(つまり環境)を持たないとする。しかし、人間の意識は宇宙の外部を想定できるので、物質系としての宇宙は情報系としての意識の海に浮かぶ島に例えることができる。宇宙と意識はめくり返しの関係にありマクロコスモス対ミクロコスモスとして対応している。この立場を整理すれば、系-環境の関係は熱力学第1法則により宇宙と人間の関係は思考の基本枠組みにより説明可能となる。
電脳経済学ではさらに系として生命系を対象にしている。生命系は無機的環境並びに生物的環境に取り囲まれ、前者とは作用・反作用の関係にあり後者とは相互作用により結ばれている。このことは環境と生態系に示す通りである。主体は環境に対して対立的かつ融合的な関係のもとに適応している。人間は創造的適応ができるが、その結果として一方で環境を破壊している。環境問題の主体は人間というより生命系であり、人間は原因者として生命系に責任を負う立場にある。これらを人間意識との関連から模式的に表現すれば図075意識と環境の考え方のようになる。
図ka8 意識と環境の考え方 |
[参考文献]
1.『岩波生物学辞典』第4版 八杉龍一ほか編集 岩波書店 1996年3月21日発行 p255