<1>財の不足状態。
<2>利用可能な諸資源の量的制約。
<3>需要に対して供給が少ない状態。
<4>負財の過剰性に対応。
<5>[希少性の原理]
人間の欲望には限りがないけれど、その欲望を充足させる手段(経済資源の供給)には限りがある。この欲望充足手段の有限性を希少性の原理という。ここから欲望と手段の間に対立関係が生じ、これを経済問題という。これを解消し持続的かつ平和的に調和させるために経済的な秩序が解明・維持される必要がある。
[説明]
(1)希少性(稀少性とも書く。)は経済が成立するための根源的な条件である。自然状態のもとでは誰でも自由に財(資源)を獲得でき、これを自由財と呼ぶ。しかし、その利用可能性が制約されてくると自由財は経済財に転じる。この段階になると経済財の取り合いをめぐる一定の秩序が形成され、これを経済秩序という。社会体制との絡みで経済秩序を体系的に記述したものが経済学である。
経済要素の出現順序に準拠して経済社会の進展過程(図8.3)を作成した。同図(6)「E生産」に明らかなように「生産」は希少性の克服を目的としている。その後、経済社会あるいは経済学は生産を中心に発展してきた。
(2)ロンドン大学のライオネル・ロビンズ教授は「経済学は諸目的と代替的用途をもつ希少な諸手段との間の関係としての人間行動を研究する科学である。」として希少性を基軸に経済を捉えた経済学者である。
さらに付け加えれば限界理論は希少性原理を反転した発想である。つまり経済主体を中心にして経済財を周囲に配置すれば限界理論になり、逆に経済財を中心にして経済主体を周囲に配置すれば希少性原理になる。両者ともに価格が価値選択の基準となっている。
(3)<5>に[希少性の原理]による経済学の古典的な定義を挙げた。
(4)上記定義<1><2><3><4><5>は「正財の不足」が前提をなし特に説明を要しない。ただ今日的な経済問題は、ケインズによる「セイ法則」の否定であり、「商品の過剰性」に起因するデフレであり、「負財の過剰性」による環境問題である。希少性は傍観者的な捉えかたで、「有限な資源」の有効利用の観点から数量化・明示化される必要がある。
[参考文献]
1.『新版経済学入門』 千種義人 同文舘 平成3年3月1日発行 pp11-12
2.『経済学のコスモロジー』 永安幸正 新評論 1991年4月30日発行 pp58-73