電脳経済学v3> f用語集> shi2 資本 (capital)  2000年10月13日作成:2000年10月21日一部修正

<1>事業を開始し経営するために要する資金。(日常的な感覚。)
<2>貨幣単位で評価した生産設備の総称。(一般的な生産資本。)
<3>土地・労働・資本は生産要素(生産の3要素ともいう)と呼ばれる。ここで土地・労働が本源的生産要素とされるのに対して資本は生産された生産要素(生産手段ともいう)とされる。(古典派による資本財としての捉え方。)
<4>迂回生産の手段で中間生産物の総体。(ベーム-バヴェルクによる中間生産物としての見方。)
<5>収益を利子率で割り引いて得られる資産価値の総計。(資本還元による擬制資本の考え方。)
<6>利子あるいは利潤を生む源泉。(ケインズによる目的論的な見方。)
<7>国民所得と資源を媒介。(中山伊知郎による機序的な見方。)
<8>所得を得る目的で利用する貨幣形態の元本。(<6><7>を併せた貨幣資本の見方。)
<9>企業家の新結合(イノベーション)の手段。(シュンペーターによる機能的な見方。)
<10>自己増殖する価値の運動体。資本家により所有され労働者を搾取する手段。(マルクスによる階級的な見方。)
<11>資産額から負債額を控除した残額。(会計制度における貸借対照表による定義。)
<12>経済過程を構成する各系の評価時点での値。(代謝モデルに準拠した定義。)
<13>期首における対象系のストック値。(熱力学第1法則と対応させた定義。)

[説明]
(1)上記のように資本の概念規定は多義性に特徴がある。そこには経済学者の思想つまり経済学説や経済学派の主張が込められている。したがって、文脈に留意して用語自体よりむしろ文意を汲み取る必要がある。
上記の用語法を理解するうえでの鍵概念を次に挙げる。@用い方として経済用語か会計用語か。A貨幣(資金)か物財(設備)か両者を併せて指すのか。B経済主体は企業か。C生産資本(産業資本)か営利資本(商業資本)か金融資本か。D対象はマクロ経済(経済過程全般または国民経済)かミクロ経済(個別の経済主体)か。E直接的な定義か間接的な定義か。F経済理論構築上の抽象概念か。G数値分析が目的か。H資本の位置づけか自体の属性か働きか。
上記<1>〜<11>については前記鍵概念を適用しておおよその意味は掴むことがでる。個々の用語説明は、電脳経済学における資本概念と対応させて次に述べる。

(2)上記<12><13>は電脳経済学の立場である。「代謝モデル」の考え方に準拠して「資本モデル」「資本の応答・同定問題」並びに「熱力学第1法則との対応」として資本の概念規定を試みた。上記 <1>〜 <11>の定義は大筋において前記4モデルで表現されている。
電脳経済学の基本的な立場は、経済過程の大枠を把握することにある。現時点では、資本一般の数量化作業は困難に見合う効果が期待できない。しかし将来的には、例えば国際公共財あるいは地球環境財を評価するには数量化が必要となる。その場合、事前に一定の枠組みが用意されていれば階層化ないし定式化は比較的容易になる。さらに国際会計基準などと統合された暁には地球資源管理は現実のものとなる。

(3)資本概念をサポートする資料として『資本理論の展開』を作成した。

[参考文献]
1.『経済学辞典』第3版 大阪市立大学経済研究所編 岩波書店 1992年3月19日 pp600-603
2.『経済学大辞典』 T東洋経済新報社 昭和63年2月15日発行 pp438-447