yu1-1 ユビキタス社会
新世紀を迎えて世界はいま分野を問わず激動と変革のまっただなかにあります。そのなかで時代を説き明かすであろうひとつの現代用語が注目されています。2005年頃までにIT革命が実現して私たちの生活環境は大きく変わると予測されます。この近未来像は「ユビキタス社会」として提起されています。Ubiquitous
は「神は同時にいたるところに存在する」を意味する神学用語に由来します。ここから「欲しい情報がこの地球上においていつでもどこでも手にいる」意味に転じ、そのような社会が現れるという含みをこめて近年用いられています。
携帯電話、インターネット、カーナビなどさまざまな形で「ネットワーク社会」はすでに実現していますので、「ユビキタス社会」をこの延長線上において捉えることは現代人にとって比較的容易なことといえます。このような時代状況を受けて政府や企業では「ユビキタス社会」へ向けての取り組みを始めています。
yu2-2 ユビキタス
・コンピューテイングともいう
近未来におけるコンピュータが遍在する社会環境を指す用語。コンピュータの存在を意識させずにコンピュータが生活環境のなかにごく自然に溶け込んでいる環境ともいえる。情報社会やネットワーク社会も、その背後でコンピュータチップが働いている意味では同義である。しかし、
なぜ今あえてユビキタスが注目されるのだろうか?
ひとつは、地球規模での情報社会化がネットワーク回線の高速大容量化・低価格化に対応して加速されてきたこと。サーバー(ネットワーク上に置かれた親コンピュータ。子コンピュータはクライエントと呼ばれる。例:メールサーバー)群が通信回線網で結合された状態ではクライエントは任意の端末機器から任意の相手機器にアクセスできる環境が整う。これはブロードバンド(ISDN、ADSL、CATV、FTTH)
通信環境の急速な普及と連動している。
ふたつめは、IPv4からIPv6への拡張にともない上記回線網が家庭電気製品や車などの一般工業製品をも包み込んできたこと。IPv4はInternet Protocol
version4の略称で32ビットのアドレス体系によるインターネットデータ転送システムの約束事を意味する。上記の各コンピュータには電話番号と同じように
アドレス番号が割り当てられている。これがIPv4では43億個で限界に達しているのでIPv6では128ビットのアドレス体系が採用されIPv4の4乗個に拡張された。このことにより天文学的な数のアドレス番号が確保され、あらゆる工業製品に番号を与えて管理することが可能となった。IPv6は2000年9月からすでに商用運用が開始され今後順次これに移行して行くが、その利用可能性に関してはまだ未知な領域も多い。
yu1-3 ユビキタス化の彼方は?
ユビキタス化の到達点は知能をもったロボットと考えられている。しかし果してそ
れが人々の幸せに結びつくのか疑問も残る。結局のところ各自の哲学が問い直されることになろうが、これについてはao1オントロジー(存在論)において
も取り上げている。
[追記]
ユビキタスの用語は、1990年代に米ゼロックス社パロアルト研究所(PARC)のマーク・ワイザーによって提唱された「ユビキタス
・コンピューテイング」に由来する。しかし欧米人はこのような長くて非日常的な用語を好まないので、最近の国際会議などではunicompと呼ばれている。この意味でユビキタスは外来日本語である。逆に日本人はこのような難しい外来語を用いた権威づけを好む傾向がある。ubiquitousは形容詞で、名詞はubiquityである。したがってユビキタスを単独に用いるのは本来からいえば適切でない。ちなみにubiquityの同義語はomnipresence;
all-presence; everywhereness; universality; pervasionである。オントロジーの場合と同様に、神学/哲学用語
のコンピュータ用語化に注目したい。
[時空自在の出所]:国立国語研究所 第2回「外来語」言い換えの中間案 (2003/08/06朝日新聞朝刊1面)
[参考資料]
(1) http://www.ipv6.org
(2) 情報化白書2002
(3)
NIKKEI Digital
CORE
(4) ユビキタスとは
(5) ソニー安藤氏の描くユビキタス
(6) 各メーカーの動向(日立)
(7) 『ユビキタス革命』荒木久義・牧田幸裕著 日経BP出版センター
(8) 『ユビキタス・ネットワーク』 野村総合研究所 NRI書籍
(9)『ユビキタスネットワーク戦略』ユビキタス
ネットワーキング フォーラム編 クリエート・クルーズ