電脳経済学v3> aご案内> a70コメント集> ct07 コメント7
( 一部修正日:2000年09月02日 )

C7−1:モスクワ大学でマルクス経済学を学んでいる学生です。今ではだれもがくだらない理論だと思っているようですが。


R7−1:カール・マルクス(1818-1883)は、19世紀の40年代から70年代にかけて既存の経済学説(とりわけ古典学派理論)の成果を唯物史観の構想に批判的継承して、資本主義社会における経済系の運動法則を解明しました。マルクス経済学はこれを体系化したもので、その粗筋はマルクス理論の基本構造に示しています。一方、ジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946)も、それまでの古典学派経済学の基本命題であるセー法則を否定してその主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』によって世界の経済学会に「ケインズ革命」と呼ばれる衝撃を与えました。その梗概についてもケインズ理論の基本構造に述べています。

ここで私が申し上げたいのは次の2点であります。第1点:人間の営みはすべて過去の批判と継承からなる。第2点:思想的な気骨(バックボーン)が人生に意味を与える。第2点は、第1点によってより豊かにより確かなものに育って行きます。上記のマルクスもケインズもこの条件を満たしていると思います。マルクス経済学を第2点に据えるのか、第1点に位置付けるのか、つまり目的とするのか方法とするのかこれはご自身が選択される問題です。ちなみに私は第1点に位置付けていますし、経済学は方法論だとするのが大方の見解のようです。

蛇足かも知れませんが私もソ連邦の崩壊後にカザフスタンで仕事をしていましたので社会主義経済の現実についてゴスプランの当事者やハーバート開発研究所(HIID)の研究員との意見交換などもしました。私なりの結論としては、社会主義的な市場経済もまた成り立ち得るのではないかと考えています。事実、中国はそれを目指し、欧州連合(EU)もその方向に進んでいるように思われます。ただ、マルクス経済学の有効性については再検討を求められていますし、その意味からもマルクス経済学の研究は推進されるべきでしょう。少なくとも私はマルクス経済学をくだらない理論とは思っていませんし、そのことについてはマルクス理論の基本構造ページの末尾並びにコメント1のR1−2に述べている通りです。