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C9−1:工学部の学生です。カルノーサイクルについてどうしても分からないことがあるので質問いたします。図b16カルノーサイクルにおけるA-B の過程で、膨張する際に高温熱源から熱を受けとっているのになぜ等温なのか。

C9−2:同じく B-C の過程で、断熱されているのになぜなおかつ膨張できるのか。
友達に相談したところ「そんなこと知らなくても問題は解ける」と言われてしまいました。検索エンジンでこのサイトをみつけました。熱力学について、とてもわかりやすく書かれているので楽しんで読ませて頂いています。


R9−1:熱力学は誰にとっても分かりにくいのは事実ですが、それは同時に熱力学がいかに意味深長な学問分野であるかの証左でもあります。高温熱源から熱を受けとっているのになぜ等温なのかというご質問の主旨は、熱を受けとっているのでシリンダーのなかの温度が上昇すべきだという意味かと思われます。ご質問は反転すれば答えを見出せると思います。つまり、シリンダーのなかの温度が高温熱源の温度と等温になるように体積で調節して余ったエネルギーは外部に仕事として取り出していて、この過程で熱は凖静的に移動しますからシリンダーのなかの温度は高温熱源の温度と同じにならざるを得ません。ここで凖静的とは可逆的と同義です。図b20-2においてT1は同じでQ1とS1が右に伸びる形が等温膨張過程に相当します。

R9−2:b18等温線と断熱線に示すポアソンの法則の関係式(1.5) pV**γ=一定 (**は指数を表しγ>1)に注目して下さい。さらに、図b20-2と図b20-3を比較しますと次の点が明らかになります。つまりB-Cの断熱膨張過程は、熱の供給が遮断された(エントロピー一定の)状態のもとで温度がT1からT2へと低下する過程ですからpはpB→pCへと低下し、VはVB→VCへと膨張します。これは断熱状態でシリンダーのなかの内部エネルギーを外部に仕事として取り出すので温度が低下するともいえます。図b16-2の奥行き方向にT軸をとり3次元のイメージを描くと分かりやすいかも知れません。

ご参考までに私は次の書物にお世話になりました。学問に王道なしといいますが、何回も読み返していると少しずつ分かってきます。

物理入門コース7『熱・統計力学』戸田盛和 岩波書店
『熱・統計力学の考え方』砂川重信 岩波書店