電脳経済学v3> b自然系> b16 カルノー・サイクル
(2004年01月16日:図1.4アニメ同期化)
(一部更新日:2004年07月14日 ) (一部修正日:2005年04月17日 )

カルノーサイクル

同T-S状態図

図b16-1 カルノー・サイクル

図b16-2 同P-V状態図

図b16-3 同T-S状態図

カルノー・サイクルは、熱機関効率の限界を探り出すためにカルノー(Nicolas Leonard Sadi Carnot:1796-1832)によって考案された図b16-1に示す構造をもつ仮想的なエンジン(熱機関を指し、次の4行程を繰り返すことにより運転されます。図b16-1に示すエンジンの動作を図b16-2 P-V状態図に対応させて説明を加えます。図b16-3 T-S状態図は、エントロピーSをS=Q/Tとして図b16-2をT-S座標に変換して両者の対応関係を示したものです。ちなみにサイクルエンジン機関、熱機関などの呼称はいずれも実質的に同義であります。
記号並びに用語の説明は次のようになります。

p:圧力、
V:体積、
Q:熱量、
W:仕事、
T:絶対温度(℃+ 273.15)、
S:エントロピー、
高温熱源:熱量を取られても温度が下がらない熱の供給源、
低温熱源:熱量を捨てられても温度が上がらない熱の受給源、
断熱材:熱も作業物質も通さない材料(ピストンやシリンダーも断熱材)、
作業物質
シリンダーのなかの気体で加熱、圧縮、冷却に耐えて1周期ののちも同じ状態を保つ物質で水蒸気や空気がこれに当たる、
透熱板:熱はよく通すが作業物質は通さない材料。

(1) 等温膨張過程(A-B):高温熱源 T1から熱量Q1をシリンダー内に取り入れる。このとき 等温線T1に沿って膨張し外部に仕事をする。
(2) 断熱膨張過程(B-C):断熱材で蓋をして断熱線に沿って低温熱源の温度T2に達するまで膨張する。このときも外部に仕事をする。
(3) 等温圧縮過程 (C-D):シリンダー内から熱量Q2を低温熱源T2へ吐き出す。このとき 等温線T2に沿って圧縮され仕事は外部から貰う。
(4) 断熱圧縮過程 (D-A):再び断熱材で蓋をして断熱線に沿って高温熱源の温度T1に達するまで圧縮する。このときも仕事は外部からを貰う。

カルノー・サイクルによって取り出される仕事Wは熱力学第1法則を表わす式(1.1)にU2-U1=0Q=Q1-Q2、W=-Wの関係を適用して式(1.3)により与えられます。図b16-2 P-V状態図おいてABCの過程で作業物質が外に対してする仕事は□ABCC'A'Aであり、一方CDAの過程で外から貰う仕事は□CDAA'C'Cであるので、作業物質が1サイクルの間に外に対してする仕事はABCDAとなります。ここに□はP-V状態図において囲まれる面積を表しこれは仕事に相当します。式(1.4)この関係を示します。

W=Q1-Q2 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   (1.3)

W=□ABCC'A'A
-□CDAA'C'CABCDA ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥  (1.4)

ここでカルノーは二つの工夫を加えました。一つは全過程を通して準静的過程を貫徹することであり、他は断熱過程においてシリンダー内の体積を変化させて温度を変化させることです。準静的過程とは熱の発生を防ぐべく(つまり温度差をつくらないように)限りなく緩やかにピストンを動かすことを指します。これでは実用にならないために仮想的と呼ばれます。一方、断熱過程の例としては夏に夕立ちをもたらす積乱雲があります。水蒸気を含む暖められた空気が周囲との熱のやりとりを絶たれた状態で(断熱的に)急上昇(膨張)すると温度が下がり雨を降らす現象となります。なお断熱線は等温線に比べて勾配が急なことが知られています。