電脳経済学v3> b自然系> b52 経済要素の変換過程
(一部修正:2004年07月17日) (b52-2を追加:2004年12月18日)

経済要素の変換過程(代謝モデルの組立て)

図b52 経済要素の変換過程(代謝モデルの組立て)


b52-1 変換系から代謝モデルへ
図b50-2
変換系の基本形式に生産・消費・分解の各系つまり表b52-1変換系における投入産出関係を適用して、各経済要素を結べば図b52経済要素の変換過程のように表現できます。ここで二重枠は各系目的財としての正の産出財を示します。図b52中央に位置する生産系を例として図b50-1熱交換器の原理との対応関係について確認してみます。
生産系(熱交換器)に投入された資源(冷水)労働(高熱)に託されて運ばれた情報(熱エネルギー)を受け取って、商品(温水)に転じて産出されます。一方、労働(高熱)の結果は廃物(低熱)に形を変えて排出されます。これは次のようにも言えます。資源に対象化された労働は商品と廃物に分離されます。つまり、労働によって対象化された資源は商品と廃物に分離されます。ここで変換系内部における物理要素の交換(発生を含む)過程は、外部の投入産出関係に着目すれば経済要素の変換過程の形態をとります。これを「変換系」と呼びます。
価値生成の本質、労働から資源への情報移転を通しての商品への情報集約にあります。このとき物質移動のためのエネルギー消費は不可欠であり、同時にエントロピーの発生もまた不可避と言えます。つまり資源と労働の出会う生産過程において両者のもつ情報とエントロピーの交換・発生、集約・分離が見られます。労働は情報移転とエントロピー処理の両面性を備えていますが、従来の労働観はエネルギー消費によるエントロピー処理の側面を強調してきました。しかし労働過程はむしろ人間自身に蓄積された内部情報の外部化ないし対象化として捉えられるべきであります。ここで特記すべきは、労働は時間ではなく質(内容)が問われる点です。なぜなら、それは商品と廃物の比率を左右するからです。つまり、熟練労働の問題は労働価値説を知識価値説と読み替えれば解決します。
ここで述べたことを整理すると表b52-1変換系における投入産出関係並びに表b52-2経済要素と物理要素の関係のようになります。廃熱は経済要素ではありませんが分解系の負の産出財をなすので代謝モデル体系では経済要素として取り扱っています。

表b52-1 変換系における投入産出関係
基本形式(図b50-2)  投 入@ 産 出A 投 入B 産 出C
熱交換器(図b50-1) 高 熱 低 熱 冷 水 温 水
経済系
(図b52)
分解系 労 働 廃 熱 廃 物 資 源
生産系
労 働 廃 物 資 源 商 品
消費系 家事労働 廃 物 商 品 労 働
補足説明 労働投入 負の産出財 中間投入財 正の産出財

表b52-2 経済要素と物理要素の関係

  経済要素 物理要素
系内 (1) 資 源: 物 質+情 報
(2) 労 働: 情 報+エネルギー
(3) 商 品: 情 報+物 質
(4) 廃 物: 物 質+エントロピー
(5) 廃 熱:
エントロピー
系外 (6)太陽光: エネルギー+情報
(7)家事労働: 情 報+エネルギー
(8)文化: 情報+物質

b52-2 理想化された経済過程
図b52を一瞥しただけで消費系と分解系を結ぶ「労働」と「廃物」の長い線に違和感を覚えます。感覚は人を欺きません。図d12-1経済系のイメージにおいて、この「労働」と「廃物」は「太陽光」と「文化」に解消されています。さらに図d12-2理想化された経済系に示す構想は宇宙ステーションの設計思想に直結するものです。
このことに関してアダム・スミスは『諸国民の富』第2編第5章において「自然も労働する」といっています。同じ文脈を辿れば消費系の産出財は廃物ではなく文化となります。結局のところ「経済系は太陽光をとり入れて廃熱を宇宙に返しながら進化過程を形成している」となります。ちなみに経済系は人間に固有な生存様式であります。地球上の人間の存在理由はこの生命進化以上でもなく以下でもありません。人間の脳は進化の最終形態を映し出していて、電脳経済学ではこれを宇宙の自己認識と捉えています。