電脳経済学v3> e社会系> e14 経済の位置づけ
(2004年04月05日作成)
(一部改訂:2004年0712日)

経済の位置づけ
史的唯物論による社会構成

図e14-1 経済の位置づけ


e14-1 経済の位置づけとは
経済の位置づけとは経済を自然と社会のインターフェイス(媒体)として捉える電脳経済学に特有の用語法で図e14-1それを示します。同図にあるように自然系から6分野を選び円環上に配置し、同様に社会系からも6分野を選び別の円環上に配置します。経済は両方に重なるので全部で11分野になります。ここで経済は自然系と社会系を結合する中心軸としての位置を占め、これを経済の位置づけと名づけます。ここで経済の内容自体はブラックボックス扱いとして、経済の外部系を構成する二つの円環を巡る
物理要素の働きに着目すると次のことがいえます。
自然系では太陽を源泉とするエネルギーの流れをまず経済まで辿ります。そこで使用されたエネルギーはエントロピーに転じて水循環の働きを通して再び宇宙空間へ放出されます。ここで図b50-1熱交換器の原理に示すように情報もエネルギーのパターンとしてともに経済系へ入力されます。物質は前記11分野自体を構成するとともに作業物質として系内外を移動・循環しながらも自身の総量は変化しません。
このように物理要素の働きを地球規模でモデル化した思考装置を地球熱機関と呼びます。一方、社会系では各分野の目的情報が螺旋状に巡りながら蓄積されます。経済の位置づけを踏まえた物理要素の働きの意義は、地球上を巡る物質が質量保存の法則に従いながら価値増殖の役割りを担っている点にあります。この点を次節で詳述します。

e14-2 担体としての物質が循環する意味
物質循環の身近な実例として水循環を挙げることができます。物質が量的に変化しないとは、ひるがえれば質的に変化することを意味します。水の例でいえば、水はミネラルウオータ、熱湯、氷河、海水、水蒸気などと姿形を変えながらも量的には保存されます。物質自身は変化せずに他の物理要素つまりエネルギー、エントロピー、情報が変わる場合、物質を他の物理要素の担体 (carrier) と呼びます。担体とは担い手あるいは運び手を意味します。担体の具体例としてPCの記憶媒体、ホワイトボード、ポリ容器、ビール瓶などがあります。さらには交通手段、家屋・建物や会社・国家の類も人命財産を預かり収容するという意味において担体といえます。つまり経済の位置づけとは経済を取り巻く外部系を担体の挙動に着目して整理した思考図式といえます。

e14-3 史的唯物論との対応関係
このような思考法に基づいて経済の文脈から社会構成を捉えた事例としてはマルクスによる史的唯物論(唯物史観ともいう)があります。経済を自然と社会の媒体と捉える着想は両者に共通しています。さらに労働を重視する点も共通しています。図e14-1図e14-2を対比させながら整理すれば表e14経済の位置づけを巡る比較表のようになります。ちなみに近代経済学ではこれらを与件として考察の対象外としています。

表e14 経済の位置づけを巡る比較表
 
電脳経済学における
経済の位置づけ
マルクス体系における
史的唯物論
 
自然
(宇宙‐生命-人間‐経済‐地球‐水‐宇宙)
(エネルギー+情報)の流れ→エントロピー処理

自然生命系に対する
物質代謝
経済
(分解系+生産系+消費系)
(資源+労働)→(商品+廃物)
地球熱機関+情報処理装置
下部構造(生産様式)
生産関係+生産力
社会
経済‐文化‐歴史‐教育‐宗教‐政治‐経済
目的情報の循環的蓄積過程
上部構造(社会形態)
政治、法律、宗教、哲学など

e14-4 結論として何がいえるか
図e14-1経済の位置づけから結論的に読み取ることができる点は次のようになります。
■経済系の本質は自然系に対しては地球熱機関であり、社会系に対しては情報処理装置である。
■ここに地球熱機関とは自然系からエネルギーを受け取ると同時に自然系へエントロピーを吐き出しその過程で一定の仕事を生み出す装置を指す。
■一方の社会系はその仕事を用いて目的情報を処理する巨大な装置である。

e14-5 参考資料
(1) 叢書ウニベルシタス927 『社会の科学』1; 『社会の科学』2 ニクラス・ルーマン著 徳安 彰 訳 法政大学出版局