電脳経済学v3> f用語集> shu 宗教 (religion) (当初作成:2006年12月19日) (一部修正:2007年01月07日) (一部修正:2007年04月03日)
1.定義困難性
宗教の定義は人間の数だけあるといわれるように、永年にわたる試みにもかかわらず宗教は今日なお定義困難な概念とされる。3.参考文献などを拠り所に徴表を列挙すれば次のようになる。
(1)超越的存在(神)への信仰による連関的体系の自覚。(広辞苑を圧縮)
(2)対象を自分より価値ある存在とする意識。(宗教意識:電脳経済学)
(3)諸対象間の聖俗の区別。
(4)神聖な対象を巡る儀礼的な行為。
(5)神によって義認されていると信じられる道徳律の存在。
(6)神聖な対象に接する儀礼に伴い引き起こされる畏怖、神秘感、罪の意識、崇敬などの特徴的な感情が神の観念と結びつくこと。
(7)祈りその他の神々と交通する形式の存在。
(8)空の世界観および
世界における個人の位置に関する自覚があり、何らかの世界目的およびそれに対する個人の参与の仕方が示されていること。
(9)世界観に基づく諸個人の生活の組織化および集団の結成。
2.宗教意識に絞る
電脳経済学は「一人一世界」の立場をとり、これは通常の意味での「独我論」に相当する。独我論に対しては必然的に「他我問題」を巡る見解が問われる。上記1.(2)の宗教意識は両者の結合関係から現れる。体系化された対象を世界と呼べば世界は獲得し体得すべきものとして各人に等しく与えられている。自由とはそこで何を取り何を捨てるかの選択を意味する。したがって宗教とはその人の世界解釈を指し、これを多元世界の解釈能力と呼ぶ。
さらに死への驀進過程としての人間の生存は宗教意識によって方向性ないし目的性が与えられる。宗教意識はその性格において存在と認識として示した意識一般の形成を促すとともに最終的には自己の解放/救済に向けて収斂して行く。老いては子に還れとは発達心理学的なミクロ-マクロ-ミクロの社会的遷移を巡る回帰経路を指すが、さらに時間逆行の文脈を辿れば情報ビッグバーンに至る。つまり“宗教から科学へ”の本義はここに見出すことが出来る。なお哲学は両者の媒体としての位置づけとなる。
3.参考文献
(1) 『哲学事典』 林 達夫ほか監修 平凡社 p655
(2) 『岩波哲学・思想事典』 廣松 渉ほか編 岩波書店 p711
(3) 『ふしぎなキリスト教』 橋爪
大三郎 X 大澤 真幸 講談社現代新書2100