図c60-1
生産要素 |
図c60-2
投入財 |
図c60-3
産出財 |
図c60-4
変換系 |
c60-1 投入財としての生産要素
生産要素とは「土地」「労働」「資本」を指します。生産要素は生産の3要素、生産3要素、生産用役ともいいます。土地と労働は「本源的生産要素」と呼ばれます。資本は「生産された生産要素」(生産手段ともいう)として本源的生産要素と区別します。(図shi3-1(3)参照)
生産系を中心に据えると生産要素は投入財に、商品は産出財に位置づけることができます。図c60-1にこの関係を示します。資本は生産された生産要素として特異な性格を帯びています。それは短期的にみれば分析対象期間の期首に初期条件として与えられます。長期的にみれば時間軸からの投入財に相当し、これを図c60-2のように表現します。(時間軸は左上から右下へ向けて取ります。以下同じ。)なお電脳経済学では生産要素は出現の時系列に対応して「土地‐労働‐資本」の順序を原則としています。
c60-2 「変換系」では負の産出財も考慮する
一方の産出財は図c60-3に示すように商品と廃物からなり、商品が正の産出財であるのに対して廃物は負の産出財となります。次の図c60-4で資本は生産系に内部化され両者は同義となります。この一連の図は短期的なフローを表現していて、長期的なストックとしての資本は生産系に解消されると考えます。この「短期的なフロー」と「長期的なストック」を対応させる考え方は企業会計における「損益計算書」と「貸借対照表」の関係に相当します。こうして図c60-4は生産系に対する投入産出関係を表現するとともに図b50-2変換系の基本形式さらには表b52-1変換系における投入産出関係の生産系の欄に対応しています。この「変換系」の考え方は電脳経済学の核心をなし、分解・生産・消費の各系はそれぞれ自然(分解)資本・生産資本・家計資本と読み替え可能となります。分解資本は奇異に響きますので自然資本と呼び、これは自然の持つ浄化還元能力を指します。この思考文脈は環境会計の考え方と大筋で符合すると考えます。
c60-3 生産要素と階級関係の対応
土地は「資源」あるいは「自然」とも呼びますので図c60-2以降は資源とします。労働も労働力あるいは人間自身さらには社会という捉え方もあります。生産要素としての「土地‐労働‐資本」は、その所有者としての「地主‐労働者‐資本家」並びにその所得としての「地代‐賃金‐利子」にそれぞれ対応しています。ちなみに生産を巡る考え方は近代経済学とマルクス経済学の分岐点をなしています。生産要素は近代経済学寄りの捉え方で、一方のマルクス経済学では図c45-1に示す生産様式という用語法によっています。