電脳経済学v3> f用語集> ka81 感性 (sensibility) (当初作成:2008年02月05日)(一部修正:2008年02月06日)

[定 義]
〈1〉外界の刺激に応じて心に深く感じ取る働きで感覚器官の感受性あるいは感覚的能力と同義。(感覚:広辞苑を全面修正)
〈2〉感覚によって呼び起こされ支配される体験内容としての知覚。(知覚:広辞苑を一部修正)
〈3〉生得の身体的な繊細さ。(感情・感動・衝動・欲望などを巡る直感的な認識能力)
〈4〉理性や意思によって洗練され統御されるべき素材としての知覚。
〈5〉悟性的認識の基礎となる非言語的・無自覚的な印象評価判断能力で直感力/直観力と同義。
〈6〉意識作用により善悪に統合される当初の快不快(苦楽)感覚。
〈7〉霊的覚醒へ向けての直観表象を巡る受容能力。

[説 明]
(1)人間はホモ・サピエンスと呼ばれるように知性人として捉えられてきた。知性に加えて理性や悟性もまた万物の霊長としての人間が備えるべき要件であろう。ところが一方では環境問題を契機として人類は生き残りを巡る根源的な問い直しを迫られている。国益云々を超えて地球社会の持続可能性は日常的に現実味を帯びてきた。そのような時代状況のもとでなぜいま感性が問題になるかについて考えて見よう。
(2)本サイトの読み手の多くは、情報技術の象徴ともいえるPC/Webの仕組みに通暁していると思われる。感性とは「入力装置」の能力を指す。人間の入力器官は五感と呼ばれ感覚神経は電気信号となって大脳皮質に伝えられ処理されて運動神経を経て動作指令が送られる。情報の流れが「入力−処理−出力」の経路を辿る点は人間の意識もコンピュータもまったく同じである。なぜならコンピュータは人間をモデルに開発されているからである。入力に瑕疵があればその結末は悲劇である。年金問題は周知の事実として入力問題そのものである。人間の場合も幼少期の入力が人生脚本において決定的な要因である点はPTSDの事例を挙げるまでもない。
(3)前置きはこの程度にして上記の定義について簡潔な説明を加える。〈1〉から〈7〉までの順序は基本的に情報の流れに沿っている。外界の刺激とは環境の変化に相当する。生命体は一般的に内部恒常性を維持するために環境適応能力を備えている。これは具体的には免疫力獲得のための学習能力を意味し、これが発達あるいは進化の内実である。この文脈から感性とは第一義的に自他の識別能力を指す。ここで快不快の感覚は個体の維持を巡る適不適に対応している。〈6〉に示すようにこれが善悪の形で体系化されたものが社会秩序である。だだし個別的な快不快は人間の全体的な善悪としばしば対立する。そこで〈4〉の過程が要請され、これは Immanuel Kant (1724-1804) が示した美学理論の核心をなし悟性的認識と呼ばれる。この意味での感性は〈5〉に対応する。
(4)結論的には外部の刺激がその主体にとって好ましいものか否かを瞬時に識別し摂取/回避する能力が感性となる。直感力というよりむしろ直観力である。直観とは単なる感性ではなく瞬時にその結果を再現して吟味したうえでの感性である。これは必然的に事前予測につながるので予知能力へと展開して行く。〈5〉に関連して夢はとりわけ意味深長である。〈7〉の霊的覚醒はこのような状態を表現しているがこの場合は霊性あるいは霊感と呼ばれる。この文脈から人間の存在意義は霊的進化となる。
(5)最後に電脳経済学における主張との関連に触れれば次のようになる。電脳経済学では幾つかの発想法を併用している。そのなかのシステム論では「系−環境」の対応関係を示している。これらをさらに意識と環境との関連から模式的に表現すれば図ka8/図ka81意識と環境の考え方のようになる。

意識と環境の考え方
図ka8/図ka81 意識と環境の考え方

[参考資料]
1.感性 (Wikipedia)
2.心理学入門コース1『知覚と感性の心理学』三浦佳世 岩波書店
3.Miura Lab. <三浦研究室>