電脳経済学v3> b自然系> b34 思考の基本枠組み
(一部追加修正:2004/08/07:2004/12/19:2007/07/10:2009/11/01:2009/12/24:2010/06/29)
図b34 内展開と外展開 |
図b34-2
不可能三角形の謎 |
1.思考の組み立て方
17世紀フランスの哲学者パスカルは「人間は考える葦である」の言葉でよく知られています。人間は確かに哲学、思想、宗教の類に依存しながらも、これらは通常は意識されません。人間は日常的には思考よりもむしろ感覚を頼りに生きています。つまり人間は「考え方を変えるとき以外は考えない」といえます。車の運転において「方向を変えるとき以外はハンドルは不用」と同じ論法です。何らかの違和感から問題意識が生じて次に思考過程に進むと思われます。電脳経済学ではこの思考を「自他を説得するための道具」と捉えています。思考によって意識の拡大化(図e24-1)が進めば「得心尽かつ安堵をもって」この世界を受け入れることができる。これが電脳経済学の基本的な考え方であり、その具体的な思考法は次に示す通りです。
2.本HPにおける主要な思考法
(1)主体論:主体⇔客体、主体⇔媒体⇔客体
(2)時空論:時間⇔空間、時間・空間・主体
(3)システム論:系⇔環境、入れ子関係(階層関係)
(4)要素論(要素還元主義):物理要素、生産要素、経済要素
(5)目的論と方法論:時間と空間、主体と客体、目的連鎖、同心円的思考、フロート
(6)経済思想論:認識論+価値論+体制論+存在論
(7)内展開+外展開:分析的接近法+外延的接近法(図b34内展開と外展開)
(8)6W2H:who+whom+what+when+where+why+how to+how
much
(9)マインドマップ(マインドマッピング):KJ法、関連図、系統図、ブレーンストーミング
あるがまま、フロート、同心円的思考、一人一世界、梵我一如、存在と認識などは、上記思考法から抽出された概念ですから相互に並存可能であります。これは電脳経済学という道具箱とそこに収まっている道具類の関係と言えます。道具が状況に応じて適切に使用されるべき点は論をまちません。
3.自分は宇宙の原点
電脳経済学は基本的に(1)主体論に準拠しています。ここでいう主体論は「自分中心」が基本となります。
なぜなら、誰にとっても自分は何ものにも代えがたい絶対的な存在であり、他者が自分の主人にはなり得ないからです。これは自分以外の誰も本人に関する責任を取れないからです。このように諸価値の源泉をなす意味において自分は宇宙の原点であります。電脳経済学はこの「独我論」の立場によります。社会的にも自分は権利・義務・責任の出発点となります。生存権や存在権のような人類普遍の原理に基づく法体系を「自然法」と呼びますが主張や論拠は共通しています。ミクロからマクロまで自分軸を中心に世界を構想する哲学は自己の相対化や他者問題などの社会倫理と何ら矛盾しません。なぜなら多様な価値観の存在を前提としない限り独我論自体が成立しないからです。ここで言う独我論は自分に対して自分で無限の責任を持つ、この点で利己主義や独善主義と決定的に異なります。本サイトに示す人間原理はこの立場を指します。
自己同一性の永続が保存則でしたので先ずこれを第一原理に据えます。ところが自明の事実として自然界も人間界もそのままであり続けることは出来ない。つまり「変化が保存に優先する」これがエントロピー増大則の大本です。したがって保存則に優先する増大則が第二原理になります。そのままであり続けることは出来ない、何故だろうと人間は考えます。どうして第二原理が第一原理に優先するのか、人間は生きようとするけど死んでゆく。これに理由を見出すことは出来ない。それ故に「原理」と呼ばれます。つまりエントロピー増大則は『第二原理が第一原理に優先する』と告げています。全く同じ文脈から梵我一如は真義において人間原理が宇宙原理に優先します。何故か対偶を取れば明白です。人間による認識が宇宙の存在に優先しないとすれば、人間はこの宇宙で要請されません。但しその人間は可能性としての人間です。
4.内展開と外展開
人間が思考を展開するとき二つの方法が考えられます。一つは対象とする系を内部に向けて自己反省的に進む「内展開」の方法(「内向法」とも言う)であり、他は対象とする系を外部に向けて外延的に拡張する「外展開」の方法(「外向法」とも言う)であります。内展開は内的宇宙(認識)の経路をとり、一方の外展開は外的宇宙(存在)の経路をとります。両者は循環的関係にあり一致します。
宇宙と地球、地球と経済、経済と人間、人間と宇宙は、それぞれ環境と系あるいはシステム関係にあります。この入れ子関係は、図b34内展開と外展開のように表現出来ます。さらに、これを物理要素の出入り関係から整理すると表b34思考の基本枠組みのようになります。但し図b-34においてH‐Cは認識の経路を、C‐G‐E‐Hは存在の経路を表します。紛らわしい場合は図e24-3あるいは図ap-1を参照願います。
カテゴリー | G | E | H | C | |
対 象 | 系 | 地 球 | 経 済 | 人 間 | 宇 宙 |
環 境 | 宇 宙 | 地 球 | 経 済 | 人 間 | |
物理要素 | 1 物 質 | 閉鎖系 | 入力のみ | 開放系 | 開放系 |
2 エネルギー | 開放系 | 開放系 |
開放系 | 開放系 | |
3 情 報 | 入力のみ | 開放系 | 開放系 | 出力のみ | |
4 エントロピー | 出力のみ | 出力のみ | 出力のみ | 入力のみ |
5.物理要素と経済系の絡み
表b34について簡単に説明を加えます。例えば経済系に着目すれば環境として地球があり、経済系自体は人間の環境としての位置づけが与えられます。地球から経済系への入力としては鉱物資源などがあります。経済系はこれまで不用になった物質を経済系から排除することによって外部性の問題を処理してきました。しかし地球は物質的に閉鎖系ですからこれには限界があります。環境問題の根源はこの物質循環が完結していない点にあります。核燃料処理問題においてこのことはさらに深刻であります。表b34において、経済系に対して物質は入力のみ、エネルギーと情報は基本的に流れだけで開放系であり、エントロピーは出力のみであります。生命系経済の要諦はこの開放定常系においてエントロピー生成極小原理に基づく散逸構造が形成される点にあります。これは複雑系における創発と同じ文脈に収まるものです。ちなみに複雑系は大筋において現代哲学の到達点と考えられます。
6.経済系は地球熱機関として扱えるか
システムの定義で述べたようにここで経済系の範囲が問われます。結論的に言えば経済系は地球熱機関として扱えるか否かあるいは地球熱機関程度が問われます。ここで経済系で取り扱う物質はカルノー・サイクルおける作業物質に相当することが前提になります。これは「物質はエネルギー・エントロピー・情報の担体」という言明の異なる表現であります。このような考察が要請される理由は経済系は地球資源管理のあり方に説明責任があるからです。カテゴリー欄のG・E・H・Cは図b34と対応しています。さらに図b34においてC-Hの関係は図e24-3梵我一如と対応しています。ところがこれは図34-2のように解決不可能な謎となります。蛇足ながら環境問題や資源管理は須く『水循環』が指標を与えると考えます。