電脳経済学v5> d経済系2> d50 資本と所有の関係
(一部修正:1998年7月9日) (全面更新2004年07月29日) (一部修正:2004年11月05日) (一部修正:2009年01月21日)

資本と所有の関係

図d50 資本と所有の関係

d50-1 物的所有から知的使用へ
図d10代謝モデル
に示す経済過程において交換系を形成する四つの経済要素は次の三つの経路上に位置しています。一方、分解・生産・消費からなる変換系はそれぞれ資本を形成するとともに中段右向きに示すA資源/商品の経路上に位置しています。
  @ 労働の経路(上段左向き)、
  A 資源/商品の経路(中段右向き)並びに
  B 廃物の経路(下段左向き)

これまでの生産資本は所有形態に応じて個人的所有と社会的所有に区分され、両者との対応関係から経済体制は資本主義と社会主義に二分されてきました。物理要素として見れば資本は物質と情報から構成されるので物的資本と知的資本に区分できます。かつ資本の本来目的は所有より使用にあるので物的資本は社会的所有・個人的使用が基本となり知的資本は個人的所有・社会的使用が基本となるべきです。こうして資本は自らの意義・評価を求める生命体のように位相を変えながら経済社会を循環します。上記文脈において資本の増殖は情報の属性から必然的に導かれる帰結であり、これは一般に文化と呼ばれます。この資本蓄積を巡る循環過程は上記の図d50資本と所有の関係 (2)提案経済系に図示する通りです。

d50-2 資本は情報の属性を体現する
「持っている人はさらに与えられて豊かになるが、持たない人は持っているものまでも取り上げられる」(マタイ福音書第13章)。「逆説真理」と呼ばれるこの喩えは情報の属性をよく表していて情報の一方的な累積性を告げています。これまでの社会的な価値観は物的所有の状態に著しく左右されましたが提案経済系の主張は個人としては意識の拡大を社会としては文化の向上を目指すべきとなります。情報処理にはハード/ソフト/データが必要ですが、この関係は図d50 (2)並びに図d10-2に明らかです。つまり物的資本(物質)と知的資本(情報)の関係は方法論と目的論の関係に対応しています。資本の本来目的を現実化するのは資本所有者の人間的意識でありかつ社会的責務であります。強欲資本主義の内実金融危機として社会問題化している今日的状況に鑑みて資本所有を巡る再考察が要請されます。