電脳経済学v3> f用語集> ae4 エントロピー (entropy)  (作成:2000年09月22日、追加:2013年11月10日

<1> 熱力学系が温度tの熱源から熱量儔を吸収する可逆な微小変化において儡=儔/tだけ増加する系の状態量S。
<2> エネルギーの en と「変化」 (transformation) を意味するギリシア語 tropy の合成語でクラウジウスによって命名された。
<3> 系の熱力学的状態のみで定まる状態量で、状態Aから状態Bへの可逆変化の経路に沿って儔/tを積分した値は経路に無関係に状態B、状態Aにおけるエントロピーの値の差SB-SAに等しい。これを式で表せば次のようになる。∫A→B儔/t= SB-SA
<4> 閉鎖系(熱も仕事も外部とのやりとりが遮断された系)内部においてひとりでに起きる変化では、エントロピーはつねに増加する。(熱力学第2法則;エントロピー増大の法則)

[説明]
(1)エントロピー概念は難解さで知られる。教科書的に定義すれば上記の通りだが、これでエントロピーが理解できるとは思われない。熱力学に限らず科学は専門用語の積み重ねが体系化されたものであり、上記の定義にもその前提をなす予備知識が求められる。したがって、エントロピーを熱力学の体系から理解するには、やはりカルノーサイクルから出発するのが望ましい。次にカルノーサイクルの効率に進むことによって熱力学第2法則エントロピー増大の法則(エントロピー増大則ともいう)にもおのずと理解が及ぶ。
(2)一方、エントロピー概念は必ずしも熱力学の体系から理解する必要はないとも言える。つまり、エントロピー概念が告げる結論や現実世界とのかかわりを押えればよい。仮にこれを比喩的理解と呼べば、大多数の人にとってむしろこの方が意義深いと思われる。この主旨はなぜ熱力学なのか並びにエントロピー増大則に述べる通りである。
(3)エントロピー概念はさらに次のように要約できる。エントロピーとはある系の無秩序性程度を表わす物理量で、物質系が平衡に向かう過程で発生し、一方的に増大する特性がある。自然状態では、物質は拡散し、エネルギーは低級化し、情報は失われる。すべての系が平衡に向かうという自然のもつこの一般的な性質はエントロピーの法則あるいはエントロピー増大の法則と呼ばれる。ただし、自然界には生命系に見られるようにエントロピーの法則に抗して内部恒常性を維持して秩序化へ向かう場合もある。いまのところ生命現象は物理現象として説明でき ないが、いずれ生命科学が物理法則を取り込んで、この宇宙を生命原理のもとに統一的に説明できるであろうとする見方は有力である。
(4)エントロピーについてのコメントが数多く寄せられている。そのうちコメント集で取り上げた分を次に掲げる。コメント9:カルノーサイクルについての疑問。コメント11:エントロピーに関する幾つかのコメント。コメント14:熱力学を経済学に適用する考え方。コメント15:カルノーサイクルにおける熱源の必要性。

[参考資料]
(1) エントロピーとは何か? 理系インデックス