電脳経済学v8> f用語集> idt 自己同一性 (Identity) (v8) (当初作成: 2016/11/01)(一部修正: 2016/11/03)

1.はじめに:
(1)自己同一性エリク・エリクソンによる発達心理学用語で当初は「自我同一性」と呼ばれた。
ここで自己同一性は同義反復となるので表現としては(自己)同一性の感じとなる。
(2)通常の場合、日本語では主語は省略されるので「自己」は日本人に馴染まない用語である。「同一性」は哲学上最も基本的な概念故にさらなる難語で、むしろ対概念の「差異性」からの接近の方が分かりやすい。英語での同義概念はsamenessあるいはmismatchとなる。つまり自己同一性は同一律 (A=A)が成立するとする主張で常識の確認となる。
(3)ところが、同一律 (A=A)は量子力学とりわけ観測問題との絡みにおいて成立しない。では今何故あえてこの反常識的な主張を開示するのか、次にA≠Aの根拠を述べる。

2.説明/考察:
(1)青年期の発達課題に取り組んだエリク・エリクソンは「自己同一性」が正常に発達した場合に獲得される人間の根本的な性質として「忠誠性」を挙げている。この忠誠性は様々な社会的価値やイデオロギー に自分の能力を捧げたりする事の出来る性質を指す。正常に発達しない場合は、茫然と日々を過ごしたり逆に特定の対象に熱狂したりする。それが極端になると社会に対する反抗や復讐の形で現れる。次にその発達過程について考える。
(2)当人である「自己」は生まれた当初は白紙状態である。自己同一性つまり自分とは何者かについては、生後は両親や周囲から徐々に与えられ後には自分自身で「主体」的に獲得することにより形成されて行く。その人なりの人生経験を積み重ねながら本人「固有の」信念体系や人格が確立されて行く。各人の出自や経験は異なるのでこの世界に同じ人間は存在しない。環境や境遇の多様性が逆に自己同一性が要請される根拠でもある。
(3)-1 前置きはこの程度にして本論に入る。上記1.(2)におけるA=Aは、bdt身体論2.(5)で示した固有方程式の左辺と右辺の同値関係(Ax=λx)を意味する。ところが、観測問題を是とすればA=Aは成立しない。spt時空に示すように「時間」「空間」「主体」三者の一致は論理的に成立しない。つまり、世にいう是非は須らく確率分布的である。平たく言えば民主主義も時や場所によりけりとなる。これは現下のアメリカ大統領選挙に明らかである。
(3)-2 例によって飛躍するが免疫とは非自己の自己化であり、これは非AをAにする働きである。生物とか進化はそもそも古典的論理では説明できない。これは日常性の文脈では他者の自己化を表す。例えば嫌な上司と酒を飲んでゴマを擦ると、まれに上司の美点に気づくこともある。しかし、これはあくまでも確率現象である。

結 論:
自己同一性はcsm宇宙原理ap人間原理を結合する。つまり、bbビッグバンと自己の中心(任意の主体)を結ぶとは自己同一性の担保が前提となる。しかし残念ながら、これは証明できない。etc倫理はこの自己同一性を願う心理について(少なくとも方向性だけでもとの思いで)述べている。似て非なる概念として「保守(主義)」があるので注意を要する。自己同一性が貫徹されれば万物斉同無条件肯定の世界が広がる。

4.参考資料:
(1) YouTube 「利己的な遺伝子」とは何か ヨビノリ たくみ [予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」〕 
(追加:2020/03/26)