電脳経済学v6> f用語集> ipb 逆問題 (inverse problem) (v6) (当初作成:2015/03/25)(一部補足:2015/04/01; 2015/04/07; 2015/11/08)
1.梗 概:
(1)逆問題は順問題と対概念の関係にある。順問題(direct problem)は通常単に問題と呼ばれる。
(2)順問題は入力(原因、現象)から出力(結果、観測)が求められる。この逆に、逆問題は出力から入力を特定する問題を指す。
(3)両者は数学的には対称/可逆でも物理的には非対称/不可逆である。
身近な例を挙げればy=f(x)においてxからyを求めるのを(順)問題とすればyからxを求めるのが逆問題となる。y=xが対称軸であればx→yとy→xは同じになる。このことは固有値問題の理解に有用である。(追加:2015/11/08)
(4)時系列的に入力は出力に先行する。この文脈から因果関係は順問題が暗黙の前提となる。
(5)換言すれば逆問題は因果関係が時間的に反転された概念となる。
更に言えば量子力学の世界では無時間的になるので両者は同時になる。これを瞬時と呼び因果律は崩壊する。(追加:2015/11/08)
(6)次に端的な事例を挙げる。@弾道計算において着地点から発射点を推定する。A線虫が人の尿から癌を識別する場合の尿。
(7)宇宙原理を順問題とすれば人間原理は逆問題となる。
(8)これを一般化して歴史問題への適用について考察する。
歴史は時系列に沿って事象を記述し因果性の文脈から説明する。ところが、観測問題では逆に現在の行為が過去の状態を変化させてしまう。更なる詳細はimn虚数 4.参考資料(9)「虚数は私達の世界観を変えてしまった」に示す通りである。(追加:2015/11/08)
2.論点説明:
(1)頭脳明晰で結論を急ぐ人へ:
量子論によれば未来は過去と無関係である。つまり歴史問題は元々存在しない。何故なら量子脳には当初から歴史も時空もないからである。人間の都合で導入されたこれらの古典的概念が今や人間を不幸にしている。(修正:2015/11/08)
(2)平和と常識を重んじる人へ:
現在の日本社会は充分に成熟しているので偉い人の教えを守って余計な苦労をすることはない。つまり逆問題など考えるより与えられた順問題に取り組んでいればそれで生活は安泰である。須らく各種問題は落ち着くところに落ち着くので年金の元が取り戻せるまで健康に注意して家族を大切に過ごせばよい。これが善良な市民の進むべき"道"というものだ。
(3)それ以外の人へ:
言っても分からん人には分からんそうだから言わざる聞かざるで序でに見ざるも加えて「三猿」でござる。
これを本サイトではwu無為自然と呼んでいる。人間は余計なことをやり過ぎている。多分本サイトもそうであろう。(追加:2015/11/08)
3.一部補足:[(1)-(3)
2015/04/01; (4)-(5)
2015/04/06)]
説明が不親切だと思う人のために一部補足する。
(1)順問題と逆問題の関係は数学的には(順)関数と逆関数の関係に相当する。
逆関数とは、関数y=f(x)のxとyとを入れ換えて得られる関数x=f
(y)のことでy=f −1(x)と表す。
(2)原因から結果を求める逆だから結果から原因を求める、となる。通常の因果関係の逆転である。
これはHow to?の逆故にWhy?に相当する。つまり逆問題の発想は別に新しいことではない。歴史上の人物は皆Why?と設問している。我々凡人の場合でも、人生問題に適用すれば「いかに生きるか?」と「なぜ生きるか?」あるいは「いかに死ぬか?」と「なぜ死ぬか?」に対応する。対偶を考えて頭を整理すれば分かりやすいかも知れない。現代の日本人には死生観が欠落している。入学試験に出ないとか金儲けに関係ないと思っているからである。
(3)だからといって目上の人にWhy?と問うと大体嫌われる。それは自分自身に向けるべき問いである。しかし稀には応えてくれる伯楽もいる。逆問題の機微はこの辺りにある。
(4)逆問題は数学の問題かと問えば、それは学問としての数学か道具としての数学かと問い直すブログに出会ったのでご参考までに3.参考資料(3)を急遽追加した。本ページでは歴史問題への適用を論じている。飛躍が過ぎると受け取るかどうかは読者のご判断次第である。
(5)前記3.参考資料(3)に次の指摘が示されている。"人間が現象を理解することに対し、数学は決定的な役割を果たしてきた。それは、「数学が実在として自然に組み込まれているから」だという。だとするなら、人間の認識領域の限界は、数学が決めていることになる(数学で分かる範囲でしか世界を認識できない)。ほんとうだろうか? それなら、哲学はどうなるの?" 「imn虚数」のサイトが参考になるかも。
3.参考資料:
(1) 『逆問題の考え方』結果から原因を探る数学 上村
豊 ブルーバックス B-1893
(2) 『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』人間原理と宇宙論 青木
薫 講談社現代新書 2219
(3) 結果から原因を探る数学 http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2015/02/post-16ee.html
(4) 量子力学の“常識”に挑む 見なかった過去も推測 日経サイエンス