電脳経済学v3> f用語集> na 内部化 (internalization) (当初作成:2007年07月25日)(一部追加(5):2007年08月10日)
(1)本HPにおいて「内部化」の用語は実に48件の出現頻度をマークしている。その意味深長性に鑑み次に補足的な説明を加える。熱力学第1法則が告げる通り内部化はある系を巡って外部化と対概念をなす。これは物質やエネルギーに関してであり、情報の場合は空間圧縮性や複写不変性などゆえに両者の対称性は担保できない。一方、エントロピーは情報と同様に増大則に従う(図b30-2)が負の要素であるゆえに逆に外部化の対象となる。内部化と外部化を巡る基本形式は熱交換器の原理(図b50-1; 図b50-2)に示す通りである。
(2)内部化は情報獲得に要する物質移動やエネルギー消費の最小化つまり効果/費用の効率向上を狙いとする。前記に加えて内部化のイメージは動物園、博物館、図書館などにおいて明らかなように最終的には情報の形をとって頭脳に流れ込む。データベースや環境会計はこの目的論/方法論のパラメータを用いて適正に評価できる。これをさらに一般化すれば生命系における進化はこの内部化の文脈において包括的な説明が可能となる。
(3)上記の背景を踏まえて逆に主体が規定できる。主体の内部状態や意思の発現は上記物理要素の挙動との絡みから差分的に定式化できる。なぜなら主体自身は観測や評価に馴染みにくいがそれに比較して要素の出入りは押さえ易いからである。内部化は人間行動や動機づけの分析にも有力な概念である。例えば欲望の内実は財貨や知識の内部化にほかならない。自明の事実としてこれらを手元に置いておけばより自由になる。主体相互間の緊張関係も内部化の方法論を巡って展開される。梵我一如は内部化を敷衍した究極状態を指している。
(4)さらなる蛇足は次のようになる。霊は通常の意味での物質やエネルギーを伴わない情報のみからなる世界といえる。心は身体や寿命に拘束されるが霊は物質や時間から自由である。その無記的多次元性ゆえに超ひも理論のみがこの世界を描出できる。ちなみに心と量子論の対応関係に加えて霊と超ひも理論についても同様の関係が展望できるが、この場合に量子論の批判的な克服なしに確かな超ひも理論には到達できない。これは独我論により踏み込むことができるプロトサイエンスの領域なのか、はたまたパラノイア的幻想なのか読者のご判断に委ねるほかない。
【追加分】
(5)環境経済などで言う内部化は「外部不経済の内部化」を指す。これの一般的な表現は「環境負荷に対する費用負担を市場メカニズムに組み込むこと」となる。つまり生産者が環境負荷相当分を価格に反映させて消費者に負担させることを意味する。自動車メーカーが排ガス浄化装置をつけて自動車購入者がその費用を負担するのが大気汚染軽減策にかかる内部化の具体例である。二酸化炭素の排出権取引や環境会計さらには環境税などの取り組みもこの文脈から内部化に相当する。「外部不経済の内部化」は市場メカニズムに基づくために合理的な動機づけが可能であり社会規範や自主規制に期待するより効果的である。つまり哲学的ないし社会的な意味で倫理性/論理性の最大化が実現できる。なお代謝モデルでは「外部不経済の内部化」は廃物経路としてモデル自体に織り込み済みである。「外部不経済の内部化」はまた循環型社会実現への道筋に通じる。