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地球村に向けて

図a50 地球村に向けて

地球村(Global village)
通信の発達で一体化した世界を指す。
カナダの文明批評家マクルーハンの用語で、地球規模で瞬時化された情報技術の利用により、距離が収縮された世界を一つの村落共同体として捉える思想。

出所:旺文社英和中辞典/
 World Book Dictionary


はじめに

21世紀を迎えて日本社会では各方面において改革の必要性が叫ばれています。私たちは、いったい何を基準に何をどう改革すべきなのでしょうか。この文脈から身のまわりを再点検するとき、現代社会を巡るあらゆる問題が本来性の喪失に起因している事実を認めざるを得ません。この本来性を回復するには、各自が健全な自然観に目覚めるとともに目指すべき自己実現の再確認が求められます。
この時代状況のもとで電脳経済学は意識改革の支援ツールとして用意されました。電脳経済学は、あたかも「新鮮な空気」や「新生児」のように当面の直接的な利益には結びつきません。しかし、その考え方を汲みとれば革新的な方法論の源泉たり得ると確信しています。なぜなら、それは現代地球社会が抱える各種の根本問題を人間意識のあり方と直結させて組み立てられているからです。

電脳経済学の狙い

電脳経済学の第一義的な狙いは新しいこれからの経済学を構想することにあります。このホームページは、この構想に接近するための基礎的な枠組みを提示するものです。この構想は、経済学の歴史を辿る方法ではなく、物理学と生物学の知見を選択的に組み合わせて論理的に導出する方法に基づいています。電脳経済学は、物質、エネルギー、エントロピーおよび情報からなる物理要素に再定義を与えたうえで、私たちを取り巻くあらゆる現象はこの物理要素の働きの文脈において説明可能とする立場をとります。これから述べる『代謝モデル』はこれを経済現象に適用したものです。まだ検証の余地はありますが、経済に関心のある方の参考になればとの思いから、永年考察を加えてきたこの構想をホームページを通して公開しました。代謝モデルに関しては、これまでもいくつかの学会誌に発表しています。このホームページはそこでの紙幅の制約を補完する面もあります。

電脳経済学の構成

電脳経済学v2は表a50のように大きく8項目から構成されます。1から8への順路は電脳経済学の内容を説明する順序を表わしています。一方、8から1への逆路は電脳経済学が探索された経路を示しています。この意味において、「8経済問題群」が電脳経済学の出発点をなすとともに到達点ともなっています。つまり、現実問題への取り組みに方法論を提供することが電脳経済学の動機であり、かつ目標でもあります。しかしこのホームページ自体は、その性格上どこからでも閲覧できるように構成されています。

表a50 電脳経済学v2の基本構成

区 分

物理現象

生命現象

経済現象

社会現象

現象面

1熱力学の考え方

3環境と生態系

6伝統的な経済学

8経済問題群

本質面

2物理概念の導入

4熱交換器の原理

5代謝モデル

7経済思想との関連


代謝モデルの位置づけ

電脳経済学のなかで代謝モデルは中核的な位置を占めています。言葉を換えれば、電脳経済学は代謝モデルの論理的な誘導過程にほかなりません。ここに代謝モデルとは、地球経済現象を生命系の視座から高度に抽象化して得られた経済系の基本構造を表現する経済基本モデルを指します。代謝モデルの主張は、伝統的な経済学における市場経済の仕組みを閉鎖系2部門モデルとして批判的に捉え、これを開放系3部門モデルに拡張する点にあります。ここに2部門とは生産系と消費系を、3部門とはそれに分解系を加えたものです。代謝モデルによれば企業・家計・政府の役割り分担は自ずから明らかであり、同時に物質循環の完結並びにエネルギー消費とエントロピー発生の極小化にも道筋を示します。代謝モデルの文脈は経済系を巡る基本ソフトのアップグレーデイングに相当します。応用ソフトと検証については自身の年齢に鑑み次の世代にゆだねます。
代謝モデルそのものは、上記表a50の「3環境と生態系」で扱っている食物連鎖過程に「4熱交換器の原理」を適用して容易に得ることが出来ます。ここで「4熱交換器の原理」における命題は一応仮説として取り扱っています。「1熱力学の考え方」から「2物理概念の導入」にかけては、その仮説の論拠を示しています。つまり4の仮説を承認すれば1と2は読み飛ばすことが出来ます。こうして代謝モデルはその帰結において、伝統的な経済学に対象領域の拡張を要請すると同時に原理面からの位置づけを与えます。両者間の接合作業は残るとしても、環境問題や格差問題などに集約される今日的な各種社会経済問題の具体的な解決策に展望が開けると考えます。
加えて代謝モデルは、交換変換(生産、消費、分解の本質を指す用語。)、資本一般形式の4つの支援モデル群によって分析的な根拠が提示されています。これらは、「7経済思想との関連」において認識論、価値論、体制論、存在論にそれぞれ対応しています。「7経済思想との関連」は「8経済問題群」の根底に横たわりながら、両者ともに意識のあり方と深くかかわっています。冒頭に述べた意識改革はこの含意に基づいています。上述の要旨は電脳経済学の概観として簡潔に示しています。